令和8年9月、日本税理士会連合会(日税連)のデジタル・システム委員会が「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」を作りました。税理士事務所がAIやクラウドを、法令を守りながら安全に使うための指針です。業界紙「税理士界」(令和8年10月15日号)で紹介された内容をもとに、要点を図にまとめました。

税理士は、お客様の大切な情報をお預かりしています。AIは便利な道具ですが、使い方を誤ると、守秘義務(業務で知った秘密を守る義務)の違反や情報漏えいにつながるおそれがあります。

1. AIを安全に使うための3つの鉄則

FIG.13つの鉄則

RULE 1
ビジネス向けの有料プランを使う

個人向けや無料版のAIは、業務に使いません。組織で管理でき、データの扱いを定めた契約を結べるプランを選びます。

RULE 2
契約を結び、学習利用をオフにする

DPA(データの扱いを定めた契約)を結びます。入力した情報がAIの学習に使われない設定を、管理画面で必ず確認します。

RULE 3
所内ルールを作り、教育する

使ってよいツールを決め、入力してよい情報を区分します。委託先の管理などの確認は、年1回以上行います。

判断に迷ったときは、必ず上司や管理責任者に相談することも求められています。

2. 入力してよい情報の見分け方

ガイドラインでは、AIに入力する前に、情報の種類を次の順番で確認します。

FIG.2入力情報の判定の流れ

Q1マイナンバーを含む情報ですか?
はい
入力禁止一般的なAIやクラウドには入力しません。マイナンバー専用のシステムだけで扱います。
Q1が「いいえ」
Q2お客様の財務データや個人情報、事務所の機密情報を含みますか?
はい
区分A有料のビジネス向けプラン・学習オフ・DPAの3つをすべて満たすツールだけで使います。お客様への事前の説明と同意が勧められています。
Q2が「いいえ」
Q3公開情報や、個人が分からないよう加工した情報ですか?
はい
区分B事務所が認めたツールであれば使えます。認めていないツールへの入力に注意します。
Q3が「いいえ」・分からない
判断できないときは、上司や管理責任者に相談してから使います。

マイナンバーが書かれた書類を読み取る場合は、番号を隠してから処理します。紙の段階で隠してからスキャンするのが安全です。PDFは図形を重ねただけでは元の文字が残ることがあるため、「墨消し」機能を使います。

3. AIサービスを導入する前の確認ポイント

FIG.3契約前に確認する7つの項目

1
ビジネス向けの有料プランか

組織で管理でき、契約を結べるか

2
DPAがあるか

データの安全管理や再委託の扱い

3
学習に使わない設定ができるか

入力データを学習に使わない設定

4
保存場所と削除方法

どの国に、いつまで保存されるか

5
セキュリティ認証

SOC 2やISO 27001などの取得状況

6
運営会社と本店所在地

外国の法律の影響を受けるか

7
権利関係

作成物の権利や、データの二次利用

4. もしAIの使い方でミスをしたら

FIG.4ミスが起きたときの5つのステップ

1
すぐに使用を止める

そのツールの使用をやめ、画面を保存します。ほかの職員も一時的に使用を止めます。

2
管理責任者に報告する

どのツールに、どんな情報を、いつ、誰が入力したかを伝えます。

3
影響の範囲を調べる

漏れたおそれのある情報と、対象のお客様を特定します。

4
被害を広げない

ツール側へのデータ削除の依頼や、お客様への報告とお詫びを行います。個人情報の漏えいは、個人情報保護委員会への報告も検討します。

5
記録し、再発を防ぐ

報告書を作り、所内に周知して、ルールを見直します。

5. 当事務所の取組

当事務所でも、ガイドラインの考え方に沿って、次のように対応しています。

  • AIの使い方について、所内ルールを作っています。
  • 使っているAIは、入力した情報が学習に使われない設定であることを確認しています。
  • マイナンバーを含む情報は、AIに入力しません。

お預かりした情報の扱いについてご不明な点があれば、お問い合わせフォームからお気軽にお尋ねください。

出典: 「税理士界」第1465号(令和8年10月15日)会務報告「『税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン』の策定について」(日税連デジタル・システム委員会)。ガイドライン本文は日税連ホームページの会員専用ページで公表されています。図は当事務所が内容を要約して作成したものです。