令和8年度の税制改正では、相続税の基礎控除や税率は変わっていません。一方で、令和8年から9年にかけて、相続対策に関わる見直しがいくつか始まります。要点をまとめました。
1. 令和8年に変わったこと
- 教育資金の一括贈与の非課税(最大1,500万円)が終了:令和8年3月31日で終わりました。それまでに受けた分は、従来どおりの扱いです。
- 事業承継税制の計画の提出期限を延長:事業承継税制は、会社の株式や事業用資産を引き継ぐときに、相続税・贈与税の納税を猶予する制度です。この制度を使うための計画の提出期限が、次のとおり延びました。
- 法人(特例承継計画):令和9年9月30日まで
- 個人事業(個人事業承継計画):令和10年9月30日まで
2. 令和9年から変わること
貸付用不動産の評価の見直し(予定)
- 相続・贈与の前5年以内に買った(または建てた)貸付用不動産が対象です。路線価などではなく、実際の取引価額に近い金額で評価します。
- 取得価額をもとに計算する方法も示されています。土地は「取得価額×地価の変動率×80%」、建物は「(取得価額-償却費)×80%」です。
- 不動産小口化商品(一つの不動産を小口に分けて販売する商品)は、取得時期にかかわらず取引価額をもとに評価します。
令和9年1月1日以後の相続・贈与から適用される予定です。国税庁は令和8年9月18日に通達案を公表しました。内容はまだ確定していません。
生前贈与の加算期間が延び始める
- 亡くなる前の贈与は、相続財産に足し戻して相続税を計算します。この期間が3年から7年に延びます(令和6年1月1日以後の贈与が対象)。
- 令和9年1月1日以後の相続から、加算期間が少しずつ延びます。7年になるのは、令和13年1月1日以後の相続からです。
- 延びた4年分(亡くなる4〜7年前)の贈与は、合計100万円までは足し戻しません。
- 年110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も、加算期間内であれば足し戻しの対象です。なお、相続時精算課税を選んだ贈与のうち、年110万円の基礎控除の部分は足し戻しません。
図 亡くなった年ごとの、足し戻す贈与の範囲
12月31日に亡くなった場合の例です。色の付いた年の贈与が、相続財産に足し戻されます(†は亡くなった年)。
亡くなった年
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
令和8年2026年・3年分
令和9年2027年・4年分
令和10年2028年・5年分
令和11年2029年・6年分
令和12年2030年・7年分
令和13年以降2031年〜・7年分
亡くなる前3年以内の贈与(全額を足し戻す)
延びた期間の贈与(合計100万円までは足し戻さない)
足し戻しの対象外
そのほかの期限
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税(最大1,000万円):令和9年3月31日までです。
- 事業承継税制の特例の期限:特例を受けられるのは、令和9年12月31日までの贈与・相続です。法人の計画の提出期限は、令和9年9月30日です。
- 個人版事業承継税制と青色申告:令和9年分からは、65万円または75万円の青色申告特別控除(複式簿記と電子申告が必要)を受けていることが条件になります。
3. 当事務所からのお願い
- 不動産を買う相続対策を考えている方は、評価の見直しの影響が出ます。早めにご相談ください。
- 贈与をした・受けた記録(日付、金額、相手)は、7年以上保管しておきましょう。
- 事業承継税制を考えている方は、計画の提出期限が近づいています。お早めにご相談ください。
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出典: 財務省「令和8年度税制改正の解説(相続税・贈与税関係)」、安田会計事務所、チェスター(通達案の解説)、チェスター(令和8年度改正の解説)、鮎澤パートナーズ、ひかり税理士法人、楽天証券、山田&パートナーズ